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チェーン・サンクス
2017.3.1

3月1日、161名の卒業生が巣立っていきました。

改めて、卒業生の諸君、ご卒業おめでとう。

君たちの未来が光あふれるものであることを心から祈っています。

 

さて、今回は式辞ではなく、卒業式の日に発行したPTA新聞の原稿を掲載します。我ながらええ話やなあと自画自賛しているネタです。題して「チェーン・サンクス」

2年前のある寒い冬の夜の出来事です。

遅くまで宴会があり終電で駅に着いたときは午前0時を回っていました。タクシーを待ちますがなかなか来ません。僕の後ろにもう一人若い会社員風の男性が並んでいました。ようやく現れたタクシーの運転手さんに、次は何分後に来るかと聞いたところ、保障できないと言われました。そこで僕は、並んでいる男性に行き先を聞き、僕の帰る方向とほぼ同じだったので、一緒に乗せてあげることにしました。

タクシーの中で、その若者はこんなことを言いました。

「自分が学生だったとき、先輩によくおごってもらいました。自分は先輩に恩返しがしたくて、今度はぼくがおごりますと言ったら、先輩にこう言われました。『お前が先輩になったとき、お前の後輩におごってやれ。人から受けた恩に報いようとするなら、自分が同じ立場に立った時、自分がしてもらったことを他の誰かにしてやればよい』今夜のことは大変助かったので、今度自分がタクシー待ちの先頭になったら、後ろで並んでいる人たちに声をかけようと思います」

そのとき、僕の頭にある言葉が浮かびました。感謝の連鎖、チェーン・サンクス!

恩を受けたとき、その人に同じ恩返しをしようとしても出来ないことはよくある。だとしたら、自分がその人と同じ立場に立った時に、自分が受けた行為を別の誰かにしてあげれば、それがせめてもの恩返しになるのではないか。そうして恩を受けた感謝の気持ちは新たな親切な行為となり、人から人へと長い鎖のようにつながっていく。まさしくチェーン・サンクス。

少し遠回りして帰ったので、タクシー代はワンコインほど上がっていましたが、何かとても得した気分になりました。

この話はそのまま日々の暮らしに置き換えられます。

自分がいいことをしてもらったと思ったら、同じ場面に遭遇したときに他の人にそれをしてあげたらいい。親や先輩や先生にお世話になり恩を受けたなら、将来自分がその立場になった時に、自分の子どもや後輩や教え子たちに同じことをしてあげたらいい。

先輩もその先輩からしてもらったかもしれない。後輩もまたその後輩へしてあげるかもしれない。その繰り返しが時を超えて人と人とを感謝の鎖でつないでゆくのです。

卒業おめでとう。君たちがこれからも多くの人に支えられ、同時に多くの人たちを支えながら、感謝の長い鎖の中で幸せな人生を送ってくれることを祈ります。

最後になりましたが、卒業生の保護者の皆様方に、三年間にわたり本校の取組にご協力くださいましたこと深くお礼申しあげ、卒業生へのはなむけとします。

 

この文章を、もし、あの冬の夜出会った若者が見てくれていたらお礼を言います。

心温まるいい話をありがとうございました。